最初に、プロラクチンについて

高プロラクチン血症による不妊症

まず、プロラクチンの働きについて説明しますね。このプロラクチンというホルモンは、赤ちゃんを出産した後の授乳期に活躍するホルモンです。

プロラクチンには、お乳の分泌を促して赤ちゃんの母乳を生産したり、大変な授乳期間中に、さらに妊娠しないように月経や排卵を抑える働きがあります。授乳期間が過ぎれば、プロラクチンの濃度が下がって再び妊娠しやすい状態に戻ります。

高プロラクチン血症による不妊症

高プロラクチン血症についてですが、このプロラクチンというホルモンが分泌されている間は、子育てのために妊娠しづらくなっている状態です。ただ、赤ちゃんの授乳期が過ぎれば、このプロラクチンの分泌量も自然と下がってきます。

しかし、何らかの異常で、授乳期を過ぎてもプロラクチンが減少せずに、多く分泌されることがあります。そうなると、受精卵が子宮内膜に着床しづらくなり、妊娠の妨げになります。このプロラクチンが必要もないのに多くなっている状態を、高プロラクチン血症と呼びます。

高プロラクチン血症の原因について

プロラクチンが多く分泌される原因としては、大きく分けますと、薬の長期服用による影響や、ホルモンの分泌をコントロールする脳の下垂体に異常がある場合の2つに分けられます。それぞれの原因についてお話ししますね。

  • 薬の作用による高プロラクチン

ピルや胃潰瘍、抗うつ剤や降圧剤などを長期間服用していると、ホルモンのバランスが乱れて高プロラクチン血症となる場合があります。これは薬の服用が原因ですので、薬の使用を中止すれば元に戻ることが多いです。ただ、治療のために中止できない場合は、薬の量を減らしたり、プロラクチンを減らす薬を処方します。

  • 下垂体による高プロラクチン

脳の下垂体という器官では、良性の腫瘍がよく発生します。ただ、腫瘍の位置が悪かったり、腫瘍が大きくホルモンバランスまで乱す場合には、高プロラクチン血症となって妊娠の障害となる可能性があります。

また、下垂体の腫瘍である下垂体腺腫には、ホルモンを生産するタイプとしないタイプの2種類があります。もし、プロラクチンを生産する下垂体腺腫ができると、プロラクチンが過剰生産されるため高プロラクチン血症となります。

この場合の治療法としては、外科的な手術で腫瘍を取り除いたり、薬を使って腫瘍を抑えるなどの治療法があります。

高プロラクチン血症の治療について

  • 薬による治療

おもにブロモクリプチンなどの薬を使用します。この薬の特徴は、プロラクチンを抑えるだけでなく、腫瘍を小さくする働きがあります。ただ、腫瘍を消し去ることは出来ないので、薬の服用をやめるとプロラクチン濃度が戻る場合があります。

また、薬を服用していると腫瘍は小さくなりますが、服用期間が長期に及ぶと腫瘍が硬くなる性質 (線維化) が起こる場合があります。

  • 放射線療法

腫瘍に放射線をあてて小さくする治療法です。この治療法の特徴は、治療を行う期間が短いという利点があります。ただ、放射線による治療では、その治療効果が出るまでに時間がかかるという難点もあります。

  • 手術療法

外科手術によって腫瘍を除去する治療法です。腫瘍が薬に耐性を持っていて、薬物療法の効果が低い場合には、この手術療法が有効となります。もし、手術で完治できなくても、その後の薬物療法での薬量を減らすことができます。