抗精子抗体による不妊症

私達の体には、健康を維持する機能として、ウイルスや病原菌から生命を守る免疫機能があります。この免疫機能によって、よほど強いウイルスでない限り免疫細胞が退治して自然治癒します。
免疫性不妊症は、この免疫の働きが原因になる不妊症です。たとえば、女性の免疫から見れば精子も異物となるため、体内の精子を排除しようとします。このような免疫性の不妊症としては、抗精子抗体などが有名です。
抗精子抗体があると、自然妊娠は難しい!
抗精子抗体は、体内に入ってきた精子を外敵として攻撃するため、ほとんどの精子が卵子にたどり着く前に無力化されてしまいます。そのため、女性が抗精子抗体を持っている場合は、自然妊娠することが非常に難しくなります。
● 男性が抗精子抗体を持っている場合
男性でも、極稀に抗精子抗体がいる場合があります。男性の場合では、精管閉鎖などで精子が精管の外に出てマクロファージに捕り、抗体産生リンパ球に情報が送られます。その結果、精子に対する抗体が作られると考えられています。
抗精子抗体の種類について
抗精子抗体は、その抗体の働き(攻撃方法)によって、大まかに2種類に分類できます。それは、精子不動化抗体と精子凝集抗体という種類です。
● 精子不動化抗体
射精された精子は、尾部を使って前進運動を行い卵子を目指します。精子不動化抗体は、この尾部の運動を阻害するため、精子は前進どころか身動きが取れなくなります。そのため、精子は卵子に辿り着けずに不妊となります。
● 精子凝集抗体
精子凝集抗体は、精子同士をくっつけることで攻撃します。くっついた精子は、前進運動が著しく阻害されるため卵子に辿り着けません。また、大きな精子の塊(凝集塊)となるため、子宮内に入ることも難しくなります。
抗精子抗体の不妊治療について
不妊症の原因となる抗精子抗体が、女性の体内で生産されている場合には、自然妊娠は非常に難しいです。通常の不妊治療や人工授精などを行っても、ほとんど妊娠には期待できません。
そのため、抗精子抗体の不妊治療としては、この抗精子抗体の影響をほとんど受けない体外受精によって不妊治療を行います。